
つねに刺激的でエネルギッシュな動きを見せる、キャットストリートの暴れん坊こと「WISM」。業界内からも熱い期待を注がれている要注目ショップなわけですが、2013AWシーズンから新たに取り扱うことになった、二つのブランドにフイナムは注目しました。〈ノンネイティブ(nonnative)〉に〈ハバノス(HBNS)〉。両ブランドのデザイナーを「WISM」側が迎え撃つという、それぞれフイナムでしか読めないような普段着丸裸系対談。ぜひ最後まで読んでみてください。
Photo_Shota Matsumoto(people)、Masaki Sato(item)
Edit_Ryo Komuta
-お二人は最近は頻繁に会ってるんですか?
WISM ディレクター 市之瀬智博(以下市之瀬/敬称略): いや、まぁ一緒にやるってなったときはちょこちょこ会ってましたけど、最近はそうでもないですね。
nonnative デザイナー 藤井隆行(以下藤井/敬称略): まぁまぁ、たまには飲み行きましょうよ。で、もうお店に並んでるんだっけ?
市之瀬: うん、ついこないだから。
藤井: どぉ?
市之瀬: 初動はいいよ、結構。
藤井: あ、ホント? 嬉しいね。
市之瀬: お店の子たちもみんな買うって言ってたよ。
-お店ではどの場所に並べてるんですか?
市之瀬: 今は二階ですね。今俺が履いてるブーツカット。これの全サイズを、ガーッと吊ってます。で、下にデニムをたたみで出してますね。このパンツは売れますよ、ホントに。以前俺が、代官山でやってたお店で買ってたような、昔から通ってくれていたお客さんも買っていくからね。
藤井: おっ、そうなの?
市之瀬: うん。いい意味で「vendor」にはセレクトショップと違った緊張感があるから行きにくいのかもしれないね。
藤井: うーん。。まぁ、それはちょっとわかるかも。ちゃんと接客されてっていうよりは、サラッと購入したいのかも、多分。
市之瀬: 業界の人は別に普通に行けると思うんだけどね。。お店に立ってるとわかるんだけど、ここの服が欲しいから直営行く、みたいなのって減ってきてるのかもなーって。
藤井: まぁ、そうかもね。ちょっと緊張感がありすぎるっていうか。
-なるほど。。最近の「vendor」の客層って、けっこう若い方が中心なんですか?
藤井: いや、そんなことはなくて、上は50代の方までいるんですけど、店員がやっぱり若いんで。大学生とかもいますしね。だから俺らの年代のお客さんとかは、確かにちょっと行きにくいとかあるかもしれないですね。でもそれとは別に、ここ数年思うのは、若いお客さんにもっとウチの服を見てもらいたいなっていう。
市之瀬: 色んな解釈があると思うんですけど、やっぱり25~6歳くらいが中心なんですよ。30代半ばとかになってくると、もう自分の好きな決まってくるブランドしか買わないじゃないですか。なかなか崩せないというか。
-確かにそうですね。。ところで、ちょっと今更?みたいなことも聞かせて下さい。お二人のお付き合いっていつ頃から始まったんですか?
市之瀬: もうね、出会って18年ですよ。19歳のとき。
藤井: そうだね。もうほぼ20年だね。俺が一コ下で。
市之瀬: 生意気なんですよねぇ、こいつが。というか、この世代みんな。先輩を先輩と思ってないんですよ(笑)。いや、全然いいんですけど。
藤井: 国分寺の古着屋で働いてたんですよ、俺が。当時〈レッドウイング(REDWING)〉のアイリッシュセッターに、〈パタゴニア(patagonia)〉みたいな格好してたら、市之瀬くんが「それどこで買ったんですかー??」みたいな感じで来てさ。
市之瀬: そうだったねぇ。俺は〈グッド イナフ(good enough)のTシャツ着てね。
-情報が全然なかったですけど、あの時代はあの時代で面白かったですよね。で、仕事で一緒に絡むのは、某セレクトショップ「T」が始まるときからですか?
市之瀬: ですね。まだそれを始めるって藤井には言ってなかったと思うんだけど、こいつから「なんか始めるんだって?」って言われたもんね。
藤井: うん、知ってたよ、俺は。「どうすればいいかなぁ??」とかって言ってたから、なんか適当だなーって(笑)。
市之瀬: そのときまだこいつは〈サイラス(SILAS)〉にいたんだけど、ちょうどやめるときで。で、お店立ち上げの時から取り扱いましたね。
-〈ノンネイティブ〉を最初に見たときの印象って覚えてますか?
市之瀬: 覚えてますよ。まずコーデュロイパンツ! あとTシャツ!
藤井: そっか、スポットからやってたんだね。
-自分も初期の"M65"を買いましたね、そういえば。
藤井: それは3シーズン目ですね。最初は作ってないんで。
市之瀬: 2003年とかですね。〈ノンネイティブ〉、〈ルシアン・ペラフィネ(lucien pellat-finet)〉、〈ネクサスセブン(NEXUSVII)〉あたりが中心だったね。〈コールハーン(Cole Haan)〉とかもなにげに入れてたんだけどね。〈ジンターラ(ZINTALA)〉に限っては、全く売れなかったね(笑)。
藤井: 〈ジンターラ〉に関しては、しかも別注ね。未だにないよ、そんなところ(笑)。
市之瀬: そうそう。
¥21,840 size:00,0,1,2,3
¥20,790 size:00,0,1,2,3
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-で、お互いに色々経て、今回の取り組みに至るわけなんですが、どんな流れで始まったんですか?
藤井: まぁ、もともとお店が始まるタイミングでは声かけてもらってたんですよ。ドメスティックの軸として、〈ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)〉、〈ソフネット(SOPHNET.)〉、それとウチっていうのを軸にしたいっていう風に言われて。ただ、そのときは色々環境が整ってなかったので、もうちょっと待ってくれと。
市之瀬: タイミング合ったら声かけてよ、みたいな感じでとりあえずは落ち着いて。
藤井: そうだね。今回もなんかこうすごく自然に始まったよね。「やるとかやらないとか抜きにして、呑みに行こうよ」みたいなね。で、そこからさらに昼飯食いに行ったりして。で、市之瀬君から「パンツだけやったら、面白いんじゃない?」って言われて。
-なるほど、パンツだけっていうのは、市之瀬さん側からの提案なんですね。
藤井: そう。この人って、ブランドの特徴をつかむのがうまいんですよね。このブランドはここ!みたいな。あとはキャットストリートの客層も「WISM」ができて、随分変わったのかなって。その辺は興味ありましたよね。
-改めて「WISM」というお店を見てみて、いかがでしたか?
藤井: いやー、セールのときだったからよくわからなかったですね(笑)。
市之瀬: また在庫の持ち方ミスってるな、みたいな感じで見てるんでしょ、どーせ(笑)。でも、一回試してみないとわかんないんだよね。今の街の感じと、トレンドとがどういう風に絡んでいくかっていうのがさ。「やってみないとわからない」ってのは持論なんで。で、そこから修正していけばいいと思うんだよね。
-なるほど。
市之瀬: そう。売れた理由もわからない、売れなかった理由もわからない、ってのが最低なんですよ。そこをきちんと見ていかないと次に繋がっていかないんで。
藤井: まぁそうだね。あとは、買われる側、つまりメーカー側も、このバイヤーさんはなんでここを抜いていったんだろうってのを、わかってないとダメだよね。俺の立場としては、やってみたんだけど失敗でした、っていうのは許されないことだからちゃんと話を聞きますけどね。
-入荷してすぐにリアクションがあったとのことですが、どうですか? 〈ノンネイティブ〉はいきそうですか?
市之瀬: いや、もう絶対いきますよ。絶対大丈夫だって藤井にも言ってますしね。
-〈ノンネイティブ〉ってパンツたくさんあるかと思うんですが、「WISM」では何型やってるんですか?
藤井: 型数はそんなやってないですね、その分積んでますけど。セレクトショップでパンツだけこんなに積んでるところはないですね。
市之瀬: パンツだけの金額でいえば、ダントツだからね。さっきも言ったけど、今はシルエットがバーッって見えるように2階に上がってすぐのところに置いてて。
-レイアウトは頻繁にいじる方ですか?
市之瀬: そうですね。かなり変えますね。天候とか、お客さんの"感じ"とか周り方とか、なんかそういうものを見て、店長の堀家と相談してすぐに変えます。
-色々なお店に〈ノンネイティブ〉は置いてますけど、「WISM」の中にあると、また違った感じに見えますよね。バイイングに始まって、どのブランドをどう見せて、何と絡めて、っていうお店の"編集"作業が、とても魅力的だなって思います。
市之瀬: ほめてます(笑)? いや、嬉しいですね。
¥20,790 size:00,0,1,2,3
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-こないだフイナムでも紹介させてもらった、〈ニューヨーク サンシャイン(NY SUNSHINE)〉とかもそうですけど、「WISM」と「コレット(colette)」しか取り扱いがないようなブランドを世界中から探してくる一方で、〈ノンネイティブ〉みたいな誰もが知るブランドも置いている。そのバランスが面白いですよね。
市之瀬: やっぱりね、お店ってその土地の地場のブランドを大事にしなきゃダメなんですよ。世界中にある名前の立ったお店って、必ずといっていいほど、地場のブランドを大切にしてるんですよね。問題はどこと組んで、誰とやって、どういう風に街を動かすかっていうことだと思うんですよね。トレンドを自分で作れるなんて思っちゃいないんで、人を巻き込むしかないんですよ。一人じゃ何もできないんで。だから、ずっと取り込みたかったんですよ、これ(ノンネイティブ)を。
藤井: まぁ他のセレクトショップの人と話してても、「WISMいいよね」っていう話にはなるよね。最近多いよ。
市之瀬: ようやくね。手のひら返し?(笑)
藤井: 俺なんて、最初にやって(取引して)なかったから、どっちかっていうと「WISM」に対して否定的な人、みたいな見られ方をしてたけどね。まぁ、特に弁解しなかったし。でも、そこには色々な理由があるわけだし。友達だけど友達じゃない、みたいな関係性にはなるしね、どうしても。
市之瀬: そうだね。10年前に取引を始めたときに、「もうこれで友達って感じじゃないよな」っていう話はしたよね。1円でも10円でも商売が始まった以上、どうしても"友達"ではいられないですよ。だから俺友達いないんですよ。
藤井: 不器用だよね、ホント。角を立てるのが得意っていうかね。でも、■ぐらいの時がちょうどいいんだよね。それが★みたいになっちゃうと、刺さっちゃうし。●になったら、話題にもならないっていうね。今はちょうど、■なんじゃないの。
市之瀬: かなぁ。あ、あと最近思うのが「WISM」は他に出店しません、とは一言も言ってないんだよね。ただ、出店するとも言ってないんだけどね。そこは常に含みを持たせておくっていうか。
-気になりますね(笑)。
市之瀬: 今後のイメージ図みたいなのは、当然持ってますけど、まぁ聞かれない限り自分から言うようなことでもないしね。でも、出店したとしたら、そこからまた色々と変わっていくんだろうな、っていう気はしますけどね。でも、この形態は守らないといけないと思ってます。まぁ、オリジナルをやってないし、きっと色んなことを色んな人に言われてると思うんですよ、多分。でも、ウチの社長にはそのへんは何も言われないですけどね。
-そうなんですね。
市之瀬: そう。でも、その代わり常に新しいことをやれ、常に話題を振りまけ、っていうのはずーっと言われてますけどね。「お前もう飽きたのか? 最近目立ってないぞ」みたいな(笑)。でも良い環境ですよ、ホントに。
-いいプレッシャーっていう感じなんですね。
市之瀬: そうですね。いやー、それにしても久々に履いたけど、いいね! このパンツ! いいよ!
藤井: 最近さー、ちょっと思ってるんだけど、「0・1・2」とかの間に、「0.5」みたいなサイズを入れていこうかなって。全部でやるわけじゃなくて、まずはベーシックな5ポケットから。
市之瀬: うん、いいんじゃない。そうなると、俺今「0」を履いてるけど、「0.5」だな、多分。デニムとかはあったほうがいいかもね。縮みなんて洗い方によって違ってくるわけだし。逆にストレッチのパンツとかはいらないよね。
藤井: そうかもね。なんかこう、初めて履いた時の「細ッ!」みたいなのを少しでも減らしたいんだよね。より細かいニーズに応えていきたいっていうか。
市之瀬: そしたら、俺レングス別注するわ、自分の分だけ。足長いから、丈が足んないのよ(笑)。
¥26,040 size:0,1,2,3
WISM
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